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はじめに
企業を調べる入口は、Webサイトだけではなくなりました。検索結果のAIによる要約、生成AIへの質問、SNS、動画、口コミなどを行き来しながら、相手は会う前から会社の輪郭をつかみ始めています。
2025年にはGoogle検索の「AIモード」が日本語でも提供され、長く複雑な質問を一度に投げかけ、複数の情報源を横断して答えを得る検索体験が現実になりました。
この状況で、Webサイトと同じ会社概要やサービス説明を紙へ移すだけなら、会社案内をつくる意味は薄くなっています。
いま会社案内が担うのは、情報の保管ではありません。
企業が大切にしていることや、選ばれる理由を、相手に伝わる順番と表現に整え、商談や採用などの対話を支える一冊にすることです。
ただし、紙を持てば信頼されるわけでも、必ず印象に残るわけでもありません。紙で伝えた内容と、Webで確認できる事実、担当者の説明、実際のサービスが一致して、初めてひとつの企業像になります。
この記事では、AI検索が広がった現在の会社案内に何を載せ、何を載せないか。Web・PDFとの分担、QRコードの遷移先、短部数で更新する考え方まで、デザイン会社の視点から整理します。
「紙かWebか」ではなく、情報の役割を組み直す
以前は、紙には一覧性や手触りがあり、Webには検索性や更新性がある、という比較で会社案内の必要性を説明できました。この違いは現在も変わりませんが、それだけでは十分ではありません。
検索や生成AIが企業情報を要約する現在、社名、所在地、一般的なサービス説明だけでは、企業同士の違いが見えにくくなります。一方で、自社サイトに公開していない内容は、自社の公式情報として検索やAIから参照されにくくなります。
Webには、正確で更新可能な公式情報、事例、実績、専門的な知見を蓄積する。
紙には、その中から相手と使用場面に合わせて選んだ要点を、読み順と視覚表現を整えて載せる。
PDFには、オンラインで共有しやすい説明と、必要に応じて相手別の内容を載せる。
つまり、紙だけに貴重な情報を閉じ込めるのでも、Webをそのまま印刷するのでもありません。公式な事実はWebでも読める状態にし、紙では「どの情報を、どの順番で受け取ってほしいか」を設計します。
Googleも、AI検索の利用者が一次情報や当事者ならではの視点、独自の記事を求める傾向を紹介しています。会社案内も、一般論を並べるより、自社だから示せる事実と判断を選ぶことが重要です。
いまの会社案内に残したい5つの内容
✔️ 仕事で大切にしている判断基準
理念を抽象的な言葉で掲げるだけでなく、日々の仕事で何を優先しているかを示します。品質、速度、地域性、専門領域、顧客との関わり方など、どの領域でどのような価値を提供する会社なのかが分かると、企業像が具体的になります。
✔️ 実績ではなく、実績が生まれた過程
完成写真や取引社数だけでは、仕事の違いは伝わりにくいものです。どのような課題があり、何を考え、どのように形にしたのか。判断の過程を短く示すことで、受け手は自分たちの課題と重ねて読めます。
✔️ 人と現場が見える一次情報
生成されたイメージや一般的な説明が増えるほど、実際の人、製品、設備、仕事風景、顧客との関係が見える写真や言葉の価値は高まります。見栄えを整えるだけでなく、誰が、どこで、どのように仕事をしているかを伝えます。
✔️ 離れた情報をつなぐ全体像
Webでは、サービス、事例、採用情報が別のページに分かれます。会社案内では、それらがどのような考え方でつながっているかを、図、写真、見開き、読み順によって一度に見せられます。情報量ではなく関係性を見せることが、紙面をつくる理由になります。
✔️ 次に見るべき情報への入口
紙面ですべてを説明しようとせず、事例、採用情報、動画、問い合わせなど、次の行動へつなげます。QRコードは置くだけではなく、読者がその瞬間に知りたい内容へ直接移動できることが重要です。
一冊ですべてを固定しない
現在の会社案内は、大量に印刷して何年も同じものを配る前提から見直せます。変わりにくい内容と変わりやすい内容を分ければ、紙の弱点である更新の難しさを抑えられます。
| 媒体 | 主な内容 | 更新の考え方 |
|---|---|---|
| 基本冊子 | 企業の考え方、強み、事業の全体像、代表事例 | 変わりにくい内容に絞り、必要部数を小さく見直す |
| 差し込み資料 | 価格、仕様、用途別サービス、採用条件 | 対象や時期に合わせ、1枚単位で差し替える |
| Web・LP | 最新事例、詳細情報、動画、問い合わせ | HTMLで公開し、検索やAIからも参照できるよう更新する |
| オンライン商談、社内共有、相手別の補足資料 | 用途別に軽量化し、版と更新日を管理する |
たとえば、企業の考え方と事業全体は基本冊子に残し、価格表や採用条件は差し込み資料へ分けます。初回は必要部数を抑え、実際の商談やイベントで使い方を確認してから改訂する方法もあります。
これは環境配慮を印象だけで語るのではなく、使われない在庫と廃棄を減らす運用にもつながります。
QRコードはトップページに戻さない
紙とWebをつなぐためにQRコードを置いても、企業サイトのトップページへ移動するだけでは、受け手がもう一度情報を探すことになります。
QRコードの遷移先は、紙面の文脈と次の行動に合わせて設計します。
- 営業用なら、掲載事例の詳しいプロセスや問い合わせへ
- 採用用なら、募集職種、社員インタビュー、応募ページへ
- 展示会用なら、展示製品、資料請求、担当窓口へ
- 会社説明用なら、更新可能な実績一覧や動画へ
印刷前には、スマートフォンで読み取りやすい大きさと余白、遷移先の表示速度、公開期限を確認します。遷移先を変更できる自社管理のURLや、用途ごとに識別できるURLを使えば、印刷後のリンク変更やアクセス確認もしやすくなります。
ただし、読み取り数だけで会社案内の効果を判断することはできません。商談での説明、資料請求、問い合わせなどと合わせて、次回の改訂材料として使います。
紙をつくらない方がよい場合もある
紙の会社案内は、存在するだけで企業価値を高めるものではありません。次の状態なら、先にWebやPDFを整える方が合理的です。
- 対面で渡す場面がなく、オンラインでの説明と共有が中心
- Webに掲載できる独自の事例や写真、公式情報がまだ整理されていない
- 事業内容や条件が頻繁に変わり、基本冊子と差し込み資料へ分けられない
- 紙とWebでロゴ、言葉、事業説明が食い違っている
- アクセシビリティや検索性のため、オンラインで読める情報を優先する必要がある
とくに、紙にだけ最新情報を載せてWebが古いままでは、相手が確認するときに不一致が生まれます。会社案内の刷新が単体の更新でよいかは「中小企業がリブランディングを考える5つのサイン」でも紹介しています。
媒体が違っても、同じ企業としてつなぐ
紙とWebへ同じ内容を載せる必要はありませんが、別の会社に見えてはいけません。共通させたいのはレイアウトそのものではなく、企業らしさを支える判断基準です。
- ロゴの使い方、色、書体、余白
- 実写写真と生成画像を含む、ビジュアルの選定基準
- 事業や強みを説明する言葉
- 事例を見せる順番と情報の粒度
- 問い合わせまでの導線と担当部署
紙で初めて知り、Webで詳しく調べ、PDFを社内共有したときにも、同じ企業の続きとして感じられる状態をつくります。
Webと会社案内で異なるフォントを使いながら、見出し・本文・数字の印象を対応させる方法は、「コーポレートフォントはどう選ぶ?」で具体的に紹介しています。
制作物が増えたときの基準は「中小企業にブランドガイドラインは必要?小さく始める7項目」、ロゴを複数媒体で安定して使う考え方は「ロゴデザインの基本設計——新設法人がまず整えるべき7項目」でも紹介しています。
紙とWebを連動させたCUREの制作事例
CUREでは、紙とWebを同じ内容へ揃えるのではなく、接点ごとに情報を編集し、共通するトーン&マナーでつないでいます。
「採用サイトとトーン&マナーを揃えた採用パンフレットの事例」では、Webサイトの情報をビジネスと採用へ切り分けながら、合同企業説明会や資料請求で使用するA4・4ページの採用パンフレットを制作しました。
「監査D&Iコンソーシアムのブランドデザイン構築事例」では、ブローシャーに概要とサービスの全体像をまとめ、詳細と最新情報はWebへ集約しています。紙、Web、展示会ツールで役割を分けながら、ロゴ、色、図版、余白、言葉の基準を共通化した事例です。
企画から印刷までの流れは「東京のデザイン会社によるパンフレット制作の全工程」で紹介しています。
まとめ
現在の会社案内は、Webサイトの内容を紙へ置き換えるためのものではありません。
企業の公式情報や最新情報はWebに蓄積し、検索やAIからも確認できる状態にする。そのうえで紙には、企業が何を大切にし、どの事例を見てほしく、どのような順番で理解してほしいかを編集して載せます。
基本冊子、差し込み資料、Web・LP、PDFへ情報を分ければ、一冊ですべてを固定せずに運用できます。QRコードもトップページへの近道ではなく、読者が次に知りたい情報へ直接つなぐ接点として設計します。
紙をつくるかどうかよりも、会う前、会っている間、持ち帰った後に、どの情報と印象をつなぐか。その全体をデザインすることが、AI検索時代の会社案内に必要です。
「既存の会社案内がWebの写しになっている」「紙・Web・PDFの内容を用途別に整理したい」といった段階でもご相談いただけます。
参考:Google 検索における「AI モード」を日本語で提供開始、 検索における AI:クエリ数が増加しクリックの質が向上
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