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はじめに
ブランドカラーを決めるとき、「信頼感を出したいから青」「高級感を出したいから黒」といった色のイメージから考え始めることがあります。
色には印象を支える働きがあります。ただし、同じ青でも、明るさ、鮮やかさ、組み合わせ、使う面積、書体や写真との関係によって見え方は変わります。色名だけで企業の印象や顧客の行動が決まるわけではありません。
ブランドカラーは、売上を直接左右する色ではありません。
企業の考え方や特徴を視覚的に伝え、Web、ロゴ、会社案内などの接点で同じ企業として認識しやすくするための設計要素です。
この記事では、色の意味一覧から選ぶのではなく、企業らしさ、競合との関係、可読性、媒体での再現性、運用ルールという5つの基準から、ブランドカラーの決め方を整理します。
ブランドカラーで決めるのは、色名だけではない
ブランドカラーは、企業、サービス、製品などの印象を支える代表的な色です。企業全体を象徴する色をコーポレートカラー、個別のサービスや製品を象徴する色をブランドカラーと呼び分けることもありますが、実務上は名称より「何を対象とし、どこで使う色か」を明確にすることが大切です。
決める対象には、色相だけでなく、明度、彩度、組み合わせ、使用面積、背景色、文字色、写真との関係まで含まれます。
色の基本的な役割は「コーポレートカラーの役割」でも紹介しています。本記事では、その先の選定と運用へ焦点を絞ります。
「色の意味一覧」だけで決めない
赤は情熱、青は信頼、緑は自然という連想は、方向を考える参考にはなります。しかし、その意味は文化、業界、周囲の色、見る人の経験によって変わります。
たとえば、青を採用している企業が多い業界で、さらに青を選ぶことが間違いとは限りません。業界らしさを保ちながら、明度、彩度、書体、写真、余白によって違いをつくる方法もあります。反対に、競合と違うことだけを目的に色を外すと、何の会社か分かりにくくなる場合があります。
重要なのは「この色は何を意味するか」だけではなく、「自社の事業や姿勢を、どのような見え方で支えるか」です。
ブランドカラーを決める5つの基準
✔️ 色より先に、目指す印象を言葉にする
最初から色見本を眺めるのではなく、どのような企業として見られたいか、現在どのように見られているか、実際の仕事にどのような特徴があるかを整理します。
「信頼感」のような広い言葉だけでなく、「慎重で正確」「話しかけやすいが軽くない」「伝統を尊重しながら新しい」といった、判断に使える表現まで具体化します。色は、その言葉を単独で表すのではなく、デザイン全体で支えるために選びます。
✔️ 競合と並んだときの見え方を確認する
競合や同じカテゴリーのロゴ、Webサイト、パッケージを並べ、よく使われている色と、その理由を確認します。違う色を探すだけでなく、業界の慣習として残すべき印象と、変えたい印象を分けます。
色だけを比較せず、写真の傾向、書体、余白、言葉遣いも合わせて見ると、自社らしい違いをどこでつくるべきか判断しやすくなります。
✔️ 読める色、使える色になっているか
ブランドカラーが美しく見えても、文字と背景の明度差が不足すると、Webサイトや資料で読みにくくなります。WCAG 2.2では、通常の文字と背景に原則4.5:1以上、大きな文字に3:1以上のコントラスト比が示されています。
また、エラーを赤だけで示す、選択状態を色だけで区別するといった使い方は避け、文字、形、線、アイコンなどを併用します。色の見え方は人によって異なるため、ブランドらしさと情報の伝わりやすさを両立させます。
ホームページ上で色を含む情報をどう見せるかは「中小企業のホームページは、何で差がつく?」でも紹介しています。
✔️ Webと印刷物で再現できるか
ディスプレイで見るRGBの色と、インクで表現するCMYKの色は、同じ数値体系ではありません。鮮やかな色や暗い色は、画面では魅力的でも、印刷すると印象が変わることがあります。紙質、表面加工、照明によっても見え方は変化します。
Web、名刺、会社案内、看板、サイン、商品など、使用場面を早い段階で想定します。必要に応じて特色や色見本帳を使い、重要な印刷物は校正で確認します。完全に同じ見え方を求めるのではなく、媒体が変わっても同じ企業として感じられる範囲を決めます。
✔️ 色の役割と使用範囲まで決める
代表色をひとつ決めても、すべてをその色で塗れば一貫するわけではありません。主役となる色、補助する色、注意を引く色、背景や文字に使う無彩色を分けます。
ブランドカラーが濃い場合は、淡い背景色や十分な余白を組み合わせる。アクセントカラーは、問い合わせボタンだけでなく、重要度に応じて使い分ける。こうした役割まで決めておくと、制作物が増えても色の意味が崩れにくくなります。
最小限そろえたいカラーパレット
| 役割 | 主な用途 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| メインカラー | ロゴ、見出し、主要な面 | 企業らしさと識別性を支えられるか |
| サブカラー | 章、図、背景、媒体別の展開 | メインカラーを補い、用途を広げられるか |
| アクセントカラー | ボタン、重要情報、誘導 | 使いすぎず、意味を限定できるか |
| ニュートラルカラー | 本文、背景、罫線、余白 | 可読性と情報階層を支えられるか |
必要に応じて、HEX、RGB、CMYK、特色番号などを記録します。ただし、数値を並べるだけでは運用できません。背景との組み合わせ、使用比率、避けたい使い方、写真上へ載せる場合の処理まで、実際の使用例と一緒に残します。
小さく始めるブランドガイドラインの項目は「中小企業にブランドガイドラインは必要?小さく始める7項目」、ロゴの色を含む基本設計は「ロゴデザインの基本設計——新設法人がまず整えるべき7項目」で紹介しています。
よくある失敗は、色を決めた後に起きる
- ブランドカラーを本文文字へ多用し、読みづらくなる
- 制作物ごとに似た色を目分量で選び、少しずつ印象が変わる
- アクセントカラーが増え、どれが重要か分からなくなる
- 色だけでエラー、必須項目、選択状態などを区別する
- 写真や素材の色とぶつかり、企業全体のトーンが揃わない
- ロゴの色だけを変更し、Web、会社案内、看板が以前のまま残る
ブランドカラーは、決めた瞬間より、複数の接点で継続して使うときに力を発揮します。逆に、運用する人が判断できないルールでは、色数を決めても一貫性は保てません。
色だけを変えるか、ブランド全体を見直すか
読みにくさや媒体ごとの色ぶれが課題なら、カラーパレットと運用ルールの見直しだけで改善できる場合があります。
一方、事業内容、顧客、社名、ロゴ、言葉、写真の方向まで現在の会社と合っていない場合は、色だけを変更すると、新旧の印象が混在します。その場合は、ブランド全体の判断基準を確認してから色を決め直します。部分的な見直しと全体刷新の判断は「中小企業がリブランディングを考える5つのサイン」でも整理しています。
CUREの制作事例で見る、色の展開
「風と森メンタルクリニックの開業ブランディング」では、「風」と「森」のモチーフから複数のパステルカラーを設計し、爽やかさと落ち着きをWebと紙媒体へ展開しています。ひとつの色へ限定せず、組み合わせ全体で環境と診療方針を支えた事例です。
「NEXUS REAL ESTATEのブランドデザイン」では、エメラルドグリーンを中心に、オフホワイトやベージュを組み合わせ、ロゴ、名刺、コーポレートサイトを一体で設計しました。
「会計事務所のブランディング」では、深いネイビーとシルバーグレーを基調に、ロゴ、名刺、Webで同じ印象を保ちながら、それぞれの媒体に合わせて色を展開しています。
CUREでは、色の印象だけで決めるのではなく、言葉、ロゴ、書体、写真、余白、使用媒体を含め、実際に使い続けられるカラーパレットを設計します。
まとめ
ブランドカラーは、特定の色を選べば売上や信頼が生まれるというものではありません。
企業として目指す印象を言葉にし、競合の中での見え方、文字の読みやすさ、Webと印刷物での再現、色の役割と使用範囲まで決めることで、初めて運用できる色になります。
代表色だけを決めるのではなく、補助色、アクセント、背景、文字色まで含めた仕組みにする。さらに、ロゴ、書体、写真、余白と組み合わせ、接点が変わっても同じ企業として伝わる状態をつくることが重要です。
「現在のブランドカラーがWebで読みにくい」「印刷物ごとに色が変わる」「ロゴ・Web・会社案内の配色をまとめて整えたい」といった段階でもご相談いただけます。
参考:W3C「Understanding Success Criterion 1.4.3: Contrast (Minimum)」、W3C「Understanding Success Criterion 1.4.1: Use of Color」
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