トラウトスプーン専業ブランド・アングラーズシステム。広告では言葉に頼らず、造形美とアートワークで世界観を視覚的に伝える表現を追求し、カタログでは実寸掲載や採用カラーの整理など、使い手の判断を支える精度の高い情報設計を行っています。本事例紹介では、ブランド創成期から携わるグラフィックデザインの事例をもとに、惹きつける力と、正しく伝える力──二つの表現軸で築かれるブランドの姿勢を紐解きます。

Magazine Advertising Design

トラウトフィッシングという専門性の高い分野においては、スペックやカラーチャート、使用シーンなどの実用情報の提示が重要とされる一方で、アングラーズシステムは一貫して、“広告は製品の詳細を伝えるものではなく、ブランドの世界観を伝えるもの”という明確な思想を持っています。
その姿勢を体現するように、時には製品の写真を一切使用せず、ブランドロゴと象徴的なアートワークのみで構成したキービジュアルを制作。広告という枠を超えた、ビジュアル・コミュニケーションの試みに取り組んできました。
ブランドの浸透度は高く、製品名とウエイト表記があるだけで、アングラーの間では“それが新製品である”と瞬時に理解されるほど。説明を必要としないレベルにまで育ったブランドだからこそ成立する、静かで力強い表現です。
トラウトフィッシングを愛する人々に深く根づいたその存在感を、言葉ではなく視覚で伝える──アングラーズシステムの広告デザインは、そうした思想とともに進化を続けています。

Catalog Design

<仕様・判型／B5×6P 巻き三つ折り>

アングラーズシステムの製品カタログは、Webサイトのデザインと世界観を踏襲しつつも、広告とはまったく異なるスタンスで構成されています。視覚的なインパクトやメッセージ性を重視する広告とは対照的に、カタログでは“正確に伝える”ことを第一に、機能性と閲覧性に特化したアプローチをとっています。誌面では、すべてのスプーンを実寸大で掲載。製品のサイズ感やシルエットを手に取るように把握できるよう配慮しています。また、各スプーンが採用しているカラーバリエーションを一覧で確認できるよう設計。モデルごとの展開色が視覚的に整理されており、ユーザーが比較検討しやすい構成となっています。限られた紙面の中でも情報の密度を保ちながら、裏表紙には各製品ページへのQRコードを掲載し、Web上で詳細な情報へシームレスにアクセスできる導線を確保。紙とデジタル、それぞれの媒体特性を活かした設計としています。