はじめに
多ページかシングルページかは、「予算」「更新頻度」「情報の整理度合い」の3つで決まります。ただし、この判断はよく誤解されがちです。「シングルページ=安い・簡易版」という思い込みだけで選ぶと、後で後悔するケースが多いのです。今回は、それぞれが向いているケースと、意外と見落とされがちな”あえてのシングルページ”という選択肢まで整理します。
シングルページが向いているのはどんな会社?
シングルページが向いているのは、次のようなケースです。
- 予算をできるだけ抑えたい(※シンプルな構成の場合。演出を凝ると費用は上がります)
- 更新の頻度が少ない、または更新を前提としていない
- 伝えたい情報がそれほど多くない
- ブランドの世界観やコンセプトを、ひとつの物語として順番に伝えたい
スクロールするだけで会社の概要から強み、問い合わせまで一気に伝えられるので、制作コストや管理の手間を抑えたい方には合理的な選択です。
「名刺代わりでいい」に潜むもの
私たちがよく受ける相談の一つに、「名刺代わりのホームページが欲しい」というものがあります。デザイン制作会社、士業、コンサルタント、小規模の製造業など、業種はさまざまですが、共通しているのは「とりあえず存在証明があればいい」「予算も時間もかけたくない」という最初の期待値の低さです。
ところが実際にヒアリングを進め、「御社の強みは何ですか」「他社と比べて選ばれる理由は?」と聞いていくと、話が一気に広がることがほとんどです。創業の経緯、実際の制作事例、代表者の考え方など、聞けば聞くほど”載せたいこと”が増えていきます。結果として、当初は1ページで済むはずだった構成が、事業内容・実績・代表挨拶といった複数ページに自然と分かれていく——これを私たちは何度も経験してきました。
つまり「名刺代わりでいい」という言葉は、多くの場合「ページ数を減らしたい」という要望ではなく、「何を載せればいいか分からないので、とりあえず最低限でいい」という表れです。載せるべきものが明確になった途端、単一ページには収まらなくなるのです。
では、シングルページを選ぶのは間違いなのか?
いいえ、そうとも限りません。ここからが本題です。
あえてのシングルページ、という選択
シングルページには、「予算を抑えるための妥協案」とは別に、「戦略としてあえて選ぶ」価値があります。
- 1つのストーリーとして読ませられる:ページを分けないということは、訪れた人の視線を上から下へ、こちらが意図した順番で誘導できるということです。会社の想い→強み→実績→問い合わせ、という一本の物語として読ませることができます。
- 情報を絞り込む力が働く:多ページだと「とりあえずこのページに置いておこう」と情報が分散し、結果的に総花的になりがちです。シングルページは物理的に載せられる情報量に限りがあるため、「本当に伝えたいことは何か」を突き詰める強制力が働きます。
- 世界観・ブランドの没入感を作りやすい:デザインスタジオ、ブランディング会社、個人単位で活動するプロフェッショナルなど、「作品や人となりを見せる」ことが目的のサイトでは、1ページに凝縮した方が世界観に没入してもらいやすくなります。ページ遷移がないぶん、離脱のポイントも少なくなります。
つまり、シングルページは「情報が少ないから選ぶもの」ではなく、「情報を絞り込み、伝え方を設計しきった結果として選ぶもの」でもある、ということです。この視点を持てているかどうかで、同じシングルページでも仕上がりの説得力は大きく変わります。
ただし、ここで一つ現実的な注意点があります。シングルページであっても、スクロール連動アニメーションや動画背景、凝ったインタラクションなどのギミックを盛り込めば、その分だけ開発工数は増え、コストは上がります。下手をすると、シンプルな多ページサイトより高額になることも珍しくありません。「ページ数が少ない=安い」のではなく、「作り込みの範囲」がコストを決めるという点は押さえておきたいところです。
多ページが向いているのはどんな会社?
一方、多ページが向いているのは次のような場合です。
- 事業内容やサービスが複数にわたる
- 採用や実績など、目的別に情報を分けて見せたい
- 公開後も継続的に更新していく前提がある
情報を目的別のページに整理することで、訪れた人がそれぞれの目的にたどり着きやすくなります。また、ページ単位で更新・追加ができるため、事業の拡大やサービスの追加にも対応しやすいというメリットもあります。
判断軸のまとめ
| 判断軸 | シングルページ向き | 多ページ向き |
|---|---|---|
| 予算 | 抑えたい(※作り込み次第で変動) | ある程度確保できる |
| 更新頻度 | 少ない・前提としない | 継続的に更新する |
| 事業の複雑さ | シンプル・単一 | 複数・多岐にわたる |
| 目的 | 世界観・ストーリーを伝えたい | 情報を整理して届けたい |
| 情報整理の状態 | 伝えたいことが明確に絞り込めている | 目的別に分ける必要がある |
まとめ
「今の規模感」だけで判断すると見誤ります。予算や更新頻度といった現実的な制約に加えて、「情報を絞り込んだ結果としてシングルページを選ぶのか」「情報を整理しきれていないままシングルページに逃げていないか」を、一度立ち止まって確認してみてください。
もし「うちはどっちが向いているんだろう」と迷っている段階であれば、その迷い自体が、実はまだ自社の強みや伝えたいことが言語化しきれていないサインかもしれません。ページ数を決める前に、一度お話を伺いながら整理するところから始めるのも一つの方法です。
ホームページの規模や構成でお悩みの方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
次回は、シングルページで始めた後に「ページを増やしたくなったら?」という拡張性の考え方について取り上げます。
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